「歩く」ってどういうことでしょう?
と、聞かれたらあなたはどう答えますか?
歩くのが難しい、歩くときに足が前にでないと言われる方に私はよくこの質問をします。
大抵の人は答えに詰まってしまいます。
なぜなら、当たり前なことほど分からないからです。
先日、個人レッスンをした方も同じ悩みを持っていたので、同じ質問をしてみました。
すると、思いもよらない答えが返ってきたのでした。
その方は88歳でしたが、未だに自転車や車にも乗られ、地域の活動にも積極的に参加されている方でした。
若い頃膝を痛めており、腰痛もあって最近は長く歩くことができず、長く歩くとお尻のあたりが痛くなってくるとのことでした。
レッスンの始めに歩いてもらうと、
「時々足が前に出ないことがある・・・」
「長く歩くとここが痛くて・・・」
と、お尻のあたりをさすっています。
そこで、私は質問をしたのです。
「Aさんは、歩くってどういうことだとお考えですか?」
するとAさんは怪訝そうな顔をされます。
「歩くことを知らない人に、説明しようとしたらどう答えます?」
もう一度私は質問をします。
すると、Aさんはしばらく考えてから、ニヤリとしながらこう答えました。
「ゴルフをするために歩くんだよ」
傍で見学されていた娘さんは苦笑いされて「どうもスイマセン・・・」と恐縮されていましたが、私は思わず「素晴らしいです!!」と答えてしまいました。
だって、本当にそうなんですもの!!!
Aさんは趣味でゴルフをされていました。
歩けなくなっても、座ったり立つことはできるから車で運転していって奥さんに車椅子を押してもらってコースを回るんだとおっしゃられるぐらいゴルフが大好きなのです。
「歩く」ってどういうことですか?
と、質問をすると大抵の方は片方の足を前に出す、重心を移すと答えます。
もちろんそれも間違いではないのです。
でも、人は「歩く」ために「歩く」のではないのです。
何か目的や動機があって「歩く」のです。
つい見落としがちですが、一番大切なことだと思います。
レッスンでは、彼自身が歩くときにやっていることにまず気づいてもらいました。
そして、他の動きのパターンを提案して、最初やっていたこととの違いを感じてもらいました。
フェルデンクライスメソッドのレッスンでは動きのパターンを変え、違いを感じてもらうことをよくします。
違いを感じると、そこで人は初めて「あぁ!そうか!」と感覚的にひらめく訳です。
私はこの「あぁ!そうか!」と人がひらめく瞬間が大好きです。
一度ひらめくと、その人はどんどん自分でアイデアを出し、より自分に馴染むように最適化していきます。
Aさんもどんどん自分の体を使ってどれが自分に馴染むかと色々試していき、自分なりの歩きを見つけていました。
最後には痛みもなくなっていたようでした。
Aさんはこの他にも、カップインしたボールをとるときに上手くかがめなくて困っているという悩みもあったのでそれについてもレッスンしました。
そこでも興味深いことが起こったのですが・・・それはまた次に・・・
思い込んでいることを、もう一度学びなおしてみませんか?
今よりもっと楽で、効率的で優雅な動きを手に入れることができるかもしれません。