ポジショニングという言葉が最近よく聞かれるようになりました。
「ポジショニングの目的」で検索すると、
・床ずれ(褥瘡)の予防
・拘縮予防、改善
この2つがダントツで出てきます。
私のブログでも、ポジショニングとセットでこの言葉がよく検索されています。
以前の記事でもポジショニングについて書きました。
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床ずれ、拘縮予防のために入れてあるそのクッションは本当に予防できているでしょうか?
医療や介護の現場では、床ずれや手や足が変形を起こさないように体の下にクッションを入れます。 姿勢変形を改善させるため、あるいは予防のためにと入れたクッションは果たしてきちんと機能しているでしょうか? ...
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確かに、ポジショニングを導入すると、床ずれ(褥瘡)、拘縮(関節が硬くなっている状態)の予防や改善にはなると思います。
2か月に1回開催される学習会でも、ポジショニングで患者さんの
筋緊張が緩和した、
床ずれ(褥瘡)、
拘縮(関節が硬くなっている状態)がよくなってきた
というお話はよく聞きます。
上の写真はポジショニング導入前と後の写真です。
この方はポジショニングを導入してから膝関節が伸びるようになりましたし、体の捻じれも徐々に改善してきました。
筋肉の緊張がなくなった、リラックスできるようになったまではいいのですが、 これで終わりなのでしょうか?
今回は私なりのポジショニングの目的について考えてみました。
そもそも、何で床ずれ(褥瘡)や拘縮(関節が硬くなっている状態)って起きてしまうのでしょうか?
色々な原因は考えられますが、一番はやはり動きが少なくなること、もしくは、動く環境を提供されていないことだと思うのです。
動きが少なくなることは、患者さんの状態が大きいと思いますが、現場でよく見られるのは動く環境を提供されていない状況です。
これは関わる側、つまり
医療者や介護者側の問題
だと思うのです。
ポジショニングを導入して、患者さんの筋肉の緊張を緩和させた!
床ずれ(褥瘡)が治った!
そこまではいいですが、それで終わりなのでしょうか?
それで終わっていたとしたら・・・
大変もったいないことをしています!!
例えば寝返りはどうしていますか?
オムツ交換では一番使う動きですよね?
例えばこんな寝返りの介助だと・・・
せっかくポジショニングで筋肉の緊張が緩んだ、または関節が動きやすくなったとしても全く生かされていませんよね?
ポジショニングを導入しているにもかかわらず、寝返りなどの
動きの介助は全く変わってない
という現場は多いのです。
上の介助方法だと股関節や膝関節は動かしていませんし、足底(足の裏)で床を押すこともしていません。
赤ちゃんの寝返りを見てください。
ちゃんと左足を使ってます。
股関節や膝を曲げていますし、足の裏で床を押しています。
両腕も寝返るために使っています。
これが人が本来持っている動きなんです。
患者さんが膝立てができるなら立てましょう。
足底(足の裏)をつけて床を押す動きを助けましょう。
私が思うポジショニングとは、
動きを引き出すための準備運動
のようなものだと思っています。
体を安定させ保持するだけではありません。
除圧や体圧分散するだけのものでもないのです。
ポジショニングで日頃から関節や筋肉の緊張が減れば、寝返りや起き上がりは随分とラクになります。
上の写真の赤ちゃんのような寝返りを提供されていれば、
股関節や膝は常に使う機会を与えられるし、足底(足の裏)で床を押すので足首も動かします。
拘縮(関節が硬くなっている状態)や尖足(つま先立ちの状態)は改善してくるでしょう。
ポジショニングだけで終わってしまって、動く環境を提供されていなければ、せっかくの成果が薄れてしまうような気がします。
わずかでも患者が自ら動くことができれば、動く環境を提供されていれば、床ずれ(褥瘡)や拘縮(関節が硬くなっている状態)のリスクは減ってくるはずです。
ポジショニングで効果が得られたら、必ず動きを提供することを次に加えてほしいなぁ~と思います。